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【タイトル】
幸せカタログ
 
【作者】
原案:日陰
脚本:Snowdrop Kiss

【登場人物】
 
◇鈴原好恵(すずはら・よしえ)
 
  事務職。
  人員不足とつりあわない仕事量で
  仕事の日は夜遅くまで働くことが多い。
  独身で、現在彼氏は居ない。

<その他の情報>
  仕事自体は嫌いではない。
  貯金はしてるが、これといった目的は無い。

<外見>
  身長 163センチ
  体重 56キロ
  年齢 26歳
  髪  黒、セミロング
==========

◆ライ・リーガル・ロメント
 
  自称・人間以外の存在。
  「幸福の権利集」の説明のために好恵の前に現れた。
  通称「幸せカタログ」と呼ばれるそれは
  書かれている内容ならなんでも1つ叶うという。

<その他の情報>
  「できれば働きたくない」と常々思ってる。
  敬語が適当。

<外見>
  身長 167センチ
  体重 60キロ
  年齢 24歳(外見年齢)
  髪  黒、短髪
==========
 
◆課長
 
  ライの直属の上司。

<その他の情報>
  なし
==========
【配役とセリフ数】
 
(L81)好恵♀:
(L82)ライ♂:
(L3) 課長♀(好恵と兼任):
==========
【備考】
 
「幸せカタログ」は以下の3冊で構成される。
 ・年単位シリーズ(分厚い)
 ・権利シリーズ(分厚い)
 ・その他(薄い。大抵の項目が上記2つに分類されるため)
==========

生放送の詳細文などにお使いください。


タイトル:幸せカタログ
台本URL:http://snowdropkissxxx.wix.com/snowdropkiss/catalog

原案:日陰
脚本:Snowdrop Kiss

配役表
 好恵&課長:
 ライ:
==========
 
​台本に関するお問合せは、メールフォームよりお気軽にどうぞ。

==========ここから本編==========

 


    SE:歩く音(屋外)


好恵「今日も疲れたぁ……でも終電じゃないだけマシだよね……。
   あ、明日朝から会議だっけ……だるいー……」


ライ「すみませーん。ちょっといいですかー?」


好恵(め、面倒な予感……)


ライ「もしも~し」


好恵「私、急いでますので」


ライ「話聞いてくださいよ、鈴原好恵(すずはら・よしえ)さん」


好恵「だから急いでるって言って……なんで私の名前知ってるの?」


ライ「あ! やっとコチラを見てくれましたね!
   えー、こほん。
   お初にお目にかかります。鈴原好恵さん。
   私、ライ・リーガル・ロメントと申します」


好恵「……あー……終電がーやばいなーこれはまずいなー……」


    SE:歩く音


ライ「ちょ、ちょっとストップ!? 今ぜったい名前で判断したでしょ!?」


好恵「いや……名前っていうか外見とか……もう全体的に」
   

ライ「確かに日本人じゃないけど!
   まぁ? そもそも人間でもないけどねー」


好恵「ちょっと何言ってんのか分かんない」


ライ「でっすよね~。誰だってそう思いますよね~。
   でもそこを信じてもらわないと始まらないんですよ。
   なので……ほい!」


好恵「……消えた!?」


ライ「こっちですよ」


好恵「え? あれ? いつのまに後ろに!?」


ライ「どうです? すごいもんでしょ?」


好恵「瞬間移動……!?」


ライ「あ、そうじゃなくて。
   認識レベルを極限まで下げたんです。
   ほら、クラスに一人はいたでしょ、影が薄くて、あれあなた誰だっけ、みたいな人。
   あれのすごいバージョンです。
   ちゃんと私はそこにいましたし、あなたの後ろまで普通に歩いていったんですよ?」


好恵「へ、へぇ~……」


ライ「人間じゃないっていうの、わかってもらえました?
   普通の人間にはこんなことできないでしょ? ね?」


好恵「…………」


ライ「その
   『妙な奴に絡まれたけど、言ってることは正しいから反応に困る』
   みたいな顔止めてくださいよ~」


好恵「アンタ、なんかいちいち腹立つよね」


ライ「ま、ま、そう釣れないことおっしゃらずに。ちょっとお話聞いてくださいよ~」


好恵「はぁ……じゃあ少しだけならいいですけど」

   
ライ「ありがとうございます!
   ではちゃっちゃと本題に入りますね。
   私は貴方に
   『個人のもつ幸福実現に対する権利の保証および施行に関する概要』を
   説明するためにやってきました」


好恵「は? こじんのもつ……何て?」


ライ「まぁ通称『幸せカタログ』っていうんですけどね」


好恵「最初からそう言えよ!」


ライ「そう、幸せカタログ……!
   それは、とある条件を満たしたあなたに訪れる不思議な出会い!」


好恵「……条件って?」


ライ「それは秘密です」


好恵「うっざ!」


ライ「幸せカタログ3冊1セット。なんとお買い得のゼロ円!」


好恵「押し売りなら結構です! 時間の無駄だったわ」


ライ「待って待って。これ凄いんだから!」


好恵「何がどうすごいのよ!」


ライ「はいそれではカタログをどうぞ!」


好恵「カタログ……って分厚っ!? なにこれ重っ!?
   ていうか今アンタどっから出したのよコレ!?」


ライ「もちろん私の中からですよ」


好恵「答えになってない!」


ライ「そんなの些細なことですって。
   だって私、人間じゃないんですし」


好恵「あ、そっか」


ライ「それでは、順番に説明していきますね~。
   疑問質問ありましたらいつでもどうぞ。
   えー、この幸せカタログに書いてある商品、どれでも注文可能です。
   ただし、たったひとつだけ」


好恵「ひとつだけ……」


ライ「はい。あなたの望みは何でも叶いますよ。
   カタログに書いてさえあればね。
   まぁ、気楽にペラペラめくってみてくださいな」


好恵「気楽にって言われても……。
   『年単位シリーズ』に『権利シリーズ』、そして『その他』。
   『その他』だけ残りの2冊に比べると薄いわね」


ライ「大抵は『年単位シリーズ』か『権利シリーズ』に分類されるので
    『その他』は少ないんですよ」


好恵「ふーん……じゃあ『年単位シリーズ』から……」


    SE:ページをめくる音


好恵「……ねえ、そもそも『年単位シリーズ』ってなに?
   すごいびっしり書かれてるけど……」


ライ「あぁ、それはそのままの意味ですよ。
   1年間、3年間、5年間、10年間と区分されてまして。
   その期間中、お願いしたものが継続的にもらえるんです」


好恵「家電屋の保証期間じゃあるまいし……」


ライ「ちなみによく選ばれるのは牛肉1年分ですね」


好恵「それはまた現金な……」


ライ「他にもいろいろあるので見てください」


好恵「どれどれ……松茸に梨に……あ、これが牛肉。
   他には……ワイン、ホールケーキ……食べ物が多いわね」


ライ「その期間中ずっともらうものですから。
   消費しやすいものが好まれるんでしょう。ちなみに鯖缶1年分もありますよ」


好恵「そんなのまで……。いまどき懸賞品でも見ないわよ」


ライ「そうなんですか?」


好恵「そう。はぁ……それにしても気が遠くなる厚みね。
   次に行きましょ。こっちが『権利シリーズ』……ってなに?」


ライ「こちらは『年単位シリーズ』と違って一度限りなんです。
   もちろん願いを叶えるのは一緒ですよ。
   モノじゃなくて、チャンスを得るって感じですね。
   まずはカテゴリを選んでください」


好恵「結構な数があるんだけど……」


ライ「仕方ないですよ。『年単位シリーズ』もそうですけど、
   毎年更新されて、増える一方なんですから」


好恵「ん? なんで?」


ライ「だって、こっちの世界で新商品が発売されたら、
   それをカタログに反映させないといけないじゃないですか。
   そんな事毎年やってたら、そりゃ膨大な量になりますって」


好恵「な、なるほど……」


ライ「担当部署から聞いた話だと、なかなか大変らしいですよ。
   まぁ私の仕事は訪問と説明なので経験はありませんけど」


好恵「へ~」


ライ「そんな話はさておいて。
   試しに選んでみてくださいよ。
   それで本決まりなんてことはありませんから」


好恵「じゃあ……この『学問』って項目で」


ライ「『学問』ってことは、223ページに飛んでください。
   そこに『学問』の項目が並んでます」


    SE:ページをめくる音


好恵「……分厚すぎて、めくるのがめんどくさいわね。電子化すればいいのに」


ライ「私もそう思います」


好恵「そう思うんならそうすればいいじゃない」


ライ「いやはや、これがなかなか……。
   上司には散々言ってるんですけどね。
   『量が膨大すぎて電子化に時間が掛かる』っていうのが主な理由らしいです」


好恵「確かに膨大なのは分かるけど……。
   ちなみに時間が掛かるってどのくらい?」


ライ「ざっと100年くらい」


好恵「は!? 100年!? 気の遠くなる話だわ……」


ライ「ところで『学問』のところ、辿りつきました?」


好恵「え? あぁ忘れてた。えっと223ページ……あった。
   『政治学』『経済学』『経営学』『人文学』『情報工学』『力学』『物理学』……。
   ……頭が痛いんだけど」


ライ「深く考えずに、そこから適当に選んでください」


好恵「そう言われてもなぁ……あ、『医学』がある。これで」


ライ「なんで『医学』を選んだんですか?」


好恵「だってこれ以外イメージが湧かなかったから。
   『力学』とか習ったことすらないわよ」


ライ「いいんじゃないですか? 私も全部知ってるわけじゃないですしー。
   じゃあ今度は245ページを開いて下さい。
   あとは具体的な内容から選ぶだけです」


好恵「245ページ……これか。
   『海外研修の募集枠に確実に入る権利』
   『自分の専攻分野の権威と知り合いになる権利』
   ……なにこれ」


ライ「あ~……これ、『学問』の中に含まれる『医学』ですからね~。
   鈴原さんがイメージしてるのは、『日常』に含まれる『病気』かな?
   138ページ開いてもらえます?」


好恵「138ページ……っていうかよく覚えてるわね」


ライ「お仕事ですから」


好恵「これか。『病気』の項目。
   『腕の良い医者と確実にめぐり合う権利』
   『可愛い看護師が担当になる権利』
   『入院期間を半分に短縮する権利』
   ……こっちはこっちでどうなのよ」


ライ「『可愛い看護師が担当になる権利』を選んで、
    その看護師と結婚した人居ますよ」


好恵「マジで!?」


ライ「マジです」


好恵「それもカタログの効果に含まれてるの?」


ライ「いいえ。
   あくまでも『可愛い看護師が担当になる権利』ですから。
   その後のことは無関係ですよ」


好恵「なーんだ。
   ……あとは『その他』か……」


ライ「それは正直読まなくていいんじゃないかなぁ」


好恵「どうして?」


ライ「最初に言いましたけど、
   大抵のことは、先の2冊でまとまってるんですよ。
   それはオマケっていうか、分類できないものを詰め込んだだけなんです。
   だからピンとくるものは無いだろうなあと」


好恵「ふーん……」


ライ「とりあえず、カタログの概要はこんなかんじです。
   何かご希望のものは浮かびました?」


好恵「今とくに希望とか無いのよねー」


ライ「これが最初で最後のチャンスですよ。ここで願わずしていつ願うんですか!」


好恵「そういわれても……」


ライ「じゃあ1年分コースから好きな食べ物選んだらどうです? 損はしませんよ」


好恵「いや、そういう話じゃなくて。
   今生活に困ってるわけじゃないし、
   欲しいものは、お金を貯めればいいんだし、って考えちゃうとさ~」


ライ「つまり、カタログを使ってまで欲しいものが無いと?」


好恵「そういうこと」


ライ「…………」(唸る声)


好恵「どうしたの?」


ライ「いや~『この人なに言っちゃってんだろう』って思いまして」


好恵「は!?」


ライ「だって、これって凄い話なのに、それを使う気が無いなんて。
   欲がないんですか、雑念など皆無ですか!
   もしかして、趣味は滝に打たれることなんですか!」


好恵「修行僧かよ! 違うから!!」


ライ「まぁこのカタログは訪問してから1週間有効なので、それまでに決めてもらえれば」


好恵「もし決められなかったら??」


ライ「何もお願いしないってことになるかなあ
   でも折角なのでじっくり考えてくださいよ」


好恵「分かったわ」


ライ「それじゃ1週間後にまたこの辺りで~」


    ==


    SE:鍵を開ける音

    SE:ドアを開ける音

    SE:ドアを閉める音

    SE:電気をつける音


好恵「ふぅ、ただいま。……っていっても私しか居ないけどさ。
   『幸せカタログ』か……確かに凄い代物だってのは分かるんだけど……。
   うーん、どうしたものか。……あ、そうだ。ちょっと探してみよ」


    ==


    SE:歩く音


好恵「今日も疲れたぁ……」


ライ「鈴原さん」


好恵「あっ」


ライ「どうも~。1週間ぶりですね」


好恵「そうね」


ライ「それで例の件ですけど、決まりました?」


好恵「1つお願いする事にしたわ」


ライ「お~それは良かった。で、どれにします?」


好恵「これよ」


ライ「……へ? これですか?」


好恵「カタログに書いてあるものはどれでも叶うって言ったわよね?」


ライ「確かに言いましたけど……」


好恵「じゃあそれでお願い」


ライ「わかりました。まさか『その他』から選ぶなんて……」


好恵「でもこれ選ぶ人いそうだけど」


ライ「少なくとも私は初めて見たんです!
   それじゃ権利を付与しますよ。
   契約を唱えますので、適当に聞いててください」


好恵「分かった」


ライ「では。

   『ライ・リーガル・ロメントの責任において
   「個人のもつ幸福実現に対する権利の保証および施行に関する概要」に記載された内容から
    鈴原好恵(すずはら・よしえ)本人が選んだ項目の使用権限を与える』(淡々と読み上げる)

   はい、OKです」


好恵「え!? それだけ!?」


ライ「そうですけど?」


好恵「いやなんかこう……神々しい光とか……そういうの無いの!?」


ライ「変な期待されても困るんですけどー」


好恵「……もういいや」


ライ「なにはともあれ、これであなたはその権利が使えるようになりました。
   いちど権利が与えられれば一生涯有効です」


好恵「ありがとう」


ライ「それじゃ私はこれで。
   正直上司に説明するのダルいです。
   こんなの選ぶ人が居るなんて思わなかったー」


好恵「いいでしょ別に。ところで、最初に会った時から思ってたんだけど」


ライ「なんですか?」


好恵「貴方、普段は敬語使わないでしょ?」


ライ「あ、分かります?」


好恵「うん」


ライ「仕事中は使わないとまずいので仕方なく。
   そもそも私は出来れば働きたくないですもん。
   でも仕事しないわけにもいかないんでー」


好恵「それは同感」


ライ「ではでは、素敵な人生を」


    ==


好恵「……帰ろう」


    ==


    SE:ノック


ライ「失礼します」


課長「入れ」


ライ「課長、先日の業務報告にきました。
   鈴原好恵への訪問、および権利の付与は無事完了しました。
   これ、報告書です」


課長「ご苦労。
   ……ん? これはなんだ? 誤植か?」


ライ「あ、『それ』で間違いないです」(あっさり)


課長「本当か?」


ライ「はい。たしかに彼女が『それ』を望んだんですって」(少し含ませるように)


    ==


    SE:鳥の鳴き声

    SE:目覚まし時計


好恵「……ん~、よく寝た。こんなに綺麗に目覚めたのいつぶりだろ。
   『アレ』本当に効果あったんだな~。『朝、気持ちよく起きられること』。
   ……よし、今日も頑張っていきますか!」

 


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